四季の絵本手帖『ジャムおじゃま』

ジャムおじゃま

ジャムおじゃま

 科学者のママが働くことになり、パパは張り切って主夫宣言をしました。お皿洗いに床掃除、菜園作り、赤ちゃんの世話をしながら夕食準備……と完璧に家事をこなすパパはある日、庭のプラムの豊作ぶりを見てジャム作りを思いつきます。
 手始めに詰めた3ビンを皮切りに、木の下、屋根の上に落ち続けるプラムを無駄にしたくないばかりに、パパは毎日ジャム作りに精を出しました。ジャムのビンが足りなくなり、花瓶からバケツ、かめにまでにジャムを入れ、家中プラムジャムだらけの光景に子どもは大喜びです。ママ、娘、息子のお弁当はジャムサンド、お茶の時間にはジャム付きスコーン、ジャムロール、ジャム巻きクレープ、ジャム入りスポンジケーキと、おいしそうなお菓子が並ぶページにも、子どもはうらやましさを隠せません。けれども、朝、昼、晩と毎日ジャムだらけの日々が続けば、人間誰でも飽きがくるというものです。ジャムずくめのあげくの果てに一家が見る悪夢は作品の山場といえ、さらなる笑いを誘います。
 自然の恵みを無駄にしたくないパパの気持ち、それを見守る家族の気持ちがそれぞれの表情に映し出され、1本のプラムの木を巡るコメディーは留まるところを知りません。これからいったいどうなるのか、ジャムの食べ過ぎでお腹の出てしまった一家の行く末は、最後の1行にほのめかされます。 
 駄洒落の効いた邦訳も見ものです。見返しには、プラムジャムの作り方が紹介されています。(asukab)