こんなすてきな恋もある

 ちょっと季節はずれだけど……、でも考えてみれば「恋」に季節はないということで、バレンタインにぴったりのかわいらしい仕掛け絵本ちっちゃくたっておっきな愛 (世界の絵本コレクション)』のことを記しておこう。
 ねずみのちびちびくんは、恋をしている。でも、その娘はずっと上のほう。キスをしたいちびちびくんは、とにかく上を目指してがんばった。最初は指ぬきに乗り、その上にマッチ箱を乗せ、その次にスイカを乗せ……。つま先立ちで背伸びして高くはなっていくけれど、まだまだ上には届かない。今度はティーカップを乗せ、キャベツを乗せ、上へ、上へ……。ちびちびくんの想いも、いっしょにどんどん高まっていく。
 ひとつひとつ踏み台になる「もの」が、仕掛けページを駆使して紹介される趣向がかわいらしい。ページをめくるごと、微妙なバランスの上で精一杯背伸びするちびちびくんが描かれ、見ているこちらは、はらはら、どきどき。いつの間にか、ちびちびくんの小さな恋の成就を応援している。恋のお相手はのびのびちゃんというのだけれど、彼女がどんな娘なのかは実際にページを開いてからのお楽しみ。のびのびちゃんがちびちびくんの懸命な姿を見て、ホロッとと引かれていくところは「よかったね!」と嬉しくなる。恋愛に限らず人を引きつける力は、ひたむきな純粋さに宿るのだと教えてもらったかのよう。大人になってもこの気持ちを持ち続けることは、子どもっぽいのか、それともそれが真のプロなのか、なんとなくわからなくなることもあるけれど。
 これは原書『Never Too Little to Love』で見つけ感動したのもつかの間、しっかり邦訳も出ていることを知りさらに飛び上がって喜んだ絵本。作者は、おたまじゃくしと蝶々の恋を描いた『Tadpole's Promise*1ジーン・ウィリス。子どもを喜ばせ、大人をうならせる絵本作りが得意と見た。(asukab)

  • かわいい恋の物語

ちっちゃくたっておっきな愛 (世界の絵本コレクション)

ちっちゃくたっておっきな愛 (世界の絵本コレクション)

 

  • 「Love」の文字が印象的な英語版

Never Too Little to Love

Never Too Little to Love