SUNNY BOY! THE LIFE AND TIMES OF A TORTOISE ぼくの人生! 大ガメは語る

 人間の寿命が二倍に延びたら、どんな人生が送れるのだろう。百年以上生きることを想像するのは、なんだか水晶玉に映る風景を眺めているような感じだ。絵本『Sunny Boy!: The Life and Times of a Tortoise』の主人公は、大ガメのサニーボーイ。南国でのんびりと一世紀以上の人生を謳歌するはずだったのがニューヨークに連れてこられ、波乱万丈の一生を送ることになる。
 何しろ人間よりも長生きするのだから、ご主人さまはみなお年を召して次々に永眠。園芸家だった最初の飼い主の死後、切手収集家である甥にもらわれていき、彼の死後、ラテン語学者である甥にもらわれていき、彼の死後、命知らずで支離滅裂な甥にもらわれていき……。生涯を通して飼い主4人の人生を見守ったサニーボーイのお話は、実話である。かめの視点で語られるストーリーがコミカルで、愉快なイラストも手伝って息子に支持された。最後の飼い主がとんでもない人物で、はらはらどきどき。ついにサニーボーイは彼といっしょに分厚いドラム缶のような円筒物に乗り込んで、ナイアガラの滝落ちを経験するはめに陥る。なんという数奇な運命。
 世の中、突拍子もないことを思いつく人がいるものだと息子と話した。「ぼくも冒険好きだけど、ナイアガラの滝から落ちたいとは思わない」。冒険的アウトドアに熱中するのもいいけれど、スリルや快感より命が大切なことを忘れてはいけないよね。サニーボーイは、百四十歳で大往生。どんな一生だったのか、想像するだけで時間の流れに圧倒される。(asukab)
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Sunny Boy!: The Life and Times of a Tortoise

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