ウィンクルさんとかもめ

 潮風とかもめの声に包まれた『ウィンクルさんとかもめ (大型絵本)』は、当地にぴったりのお話である。舞台は英国の港町でも、湿った潮の香りがする港の様子は北方の港町であればきっとどこでもいっしょだろう。うっすらと晴れた空、かすんだ水平線、市場の活気、おかみさんたちのおしゃべり……は、かもめの目には同じに映っているはずだ。
 かめもにえさをあげるのが大好きなウィンクルさんは、仲間の漁師たちから変わり者呼ばわりされている。おんぼろボート、サリー号で漁に出ても、魚はあまり獲れず、話し相手といえばえさを食べにくるかもめたちしかいなかった。
 なんだか状況が、わたしに似ているなあ。価値観が共有できないので、わたしも世間一般と交わりにくい性格なのである。自分の変わり具合を百パーセント肯定しているわけじゃないけれど、気持ちよく呼吸のできる居場所を探すと、どうしても一人か、家族になっている。
 港の様子は、ある日突然ぱたりと魚が獲れなくなったところから描かれる。人々の息遣いが臨場感いっぱいに映し出され、それはまるで映画を見ているような気分。国中の学者が呼び集められ、不漁の原因を突き止めようとしたけれど、結果はいかに。
 最後は、ウィンクルさんらしさで締めくくられる。潮の匂いが、ビタミン剤のように体に染み入ってきた。(asukab)
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  • 港の風景を粋なイラストが温もりいっぱいに描く

ウィンクルさんとかもめ (大型絵本)

ウィンクルさんとかもめ (大型絵本)