The Adventure of Marco Polo マルコ・ポーロの冒険

 『東方見聞録 (地球人ライブラリー)』と聞いて連想するのは、「黄金の国ジパング」という表現。ベニス商人の息子マルコ・ポーロ(1254-1324)が驚異と憧憬を持ってヨーロッパに伝えたというその国にわたしは住んでいる――。中学生の頃、「ジパング」という響きが何かしら誇らしかった。今回、ヨーロッパ世界観に衝撃を与えたという旅行記(英語訳『The Description of the World』)を紹介する歴史絵本『The Adventures of Marco Polo』を読み、その昔、マルコ・ポーロの名を知ったときに読んでいればよかったなあ、と後悔をした。あのクビライ・ハンに気に入られ二十年間も元朝に仕えていたなんて、知っているだけでぞくぞくしただろう。元寇のとき、マルコはどこにいたのか。クビライ謁見が1271年でベニス帰国が1292年だから、文永の役(1274年)、弘安の役(1281年)はともに、元の臣下として黄金の国の行方を見守っていたことになる!
 そもそもこの絵本の執筆は、1995年に大英図書館中国部主任のフランシス・ウッドが、著書『マルコ・ポーロは本当に中国へ行ったのか』でマルコ口述の信憑性を疑ったことにきっかけがあるように見えた。元朝の資料が十分に残っていないことから議論の白熱化も納得できるところだけど、誇張表現はあるにせよ、マルコは実際中国各地を歩いて回ったのだとわたしは思っている。中でも杭州南宋の首都、臨安)を世界でもっともすばらしい都市と記した描写が美しく、ここは何度も読み返してしまった。これはヨーロッパよりも、中国を先に訪ねなきゃ!
 若きマルコ・ポーロがちらりと視線を送る表紙には金縁が施され、クリスマスにもお似合いの華やかさを添えている。また、本物の中世画ではないかと思わせる上品なイラストも絶品。13−15世紀の挿画とともに、絵本を風雅さで包み込む。
 ポーロ一家(父、叔父、マルコ)の足跡を地図と原文(英語)からの抜粋でつづる絵本を読みながら、クリスマスは東方に思いをはせてもいいなあ、と思ったりする。(asukab)
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  • ヨーロッパとアジアをつなげて思考

The Adventures of Marco Polo

The Adventures of Marco Polo

  • これは豪華な「東方見聞録」! でも品切れの模様

全訳 マルコ・ポーロ東方見聞録―『驚異の書』fr.2810写本

全訳 マルコ・ポーロ東方見聞録―『驚異の書』fr.2810写本