水も滴る不思議な子猫

 うちのギャビイは、水周りが大好きだ。猫と水とは最悪の相性かと思いきや、彼女の場合は別のようである。最初はのどが渇くからだろうと理由付けたが、どうもそうではないらしい。
 体のサイズに合うからかバスルームの洗面シンクがお気に入りで、よくころんと体をCの字に丸め中に寝転がっている。何をしているのかといえば、栓のゆるい蛇口から水の滴り落ちる瞬間を飽きることなく見つめているのだった。
 ぽとんと落ちる雫と子猫のギャビイ――なんだか詩的な時間ではないか。黒いシルクの毛並みに水玉が零れ落ちても、まったく平気。水を眺め、水を舐め、そして忘れた頃、水浸しになって部屋に戻ってくる。彼女の歩くところにはぺたぺたと塗れた小さな足跡が残るので、絵本など大切な書籍は出しっぱなしにしておけない。真冬に水遊び。それでも水も滴る不思議な子猫に、家族みんな首っ丈だった。