Dear Mr. Rosenwald 親愛なるローゼンウォルドさんへ――ローゼンウォルド学校の成り立ち
『Dear Mr. Rosenwald』にはアフリカ系米国人の地域発展を目的に1917年から1932年の間、南部十五州*1に建設されたローゼンウォルド学校の成り立ちが、一学校創設の過程をめぐり語られる。創業1886年のシアーズ・ローボック社ジュリアス・ローゼンウォルド社長は、自らがユダヤ移民子弟で人種差別を嫌っていた。南北戦争後1865年、奴隷解放が実現しても黒人への教育は教会で行われる場合を除き皆無で、子どもたちは無学のままがほとんど。黒人教育を目指し専門機関を創設した元奴隷ブッカー・T・ワシントンの影響を受け、ローゼンウォルドは一校につき六百ドルの寄付を行い、五千校近い学校建設を行った。工事には黒人、白人みなが協同して参加したという。
学校といっても、ほとんどが一室か二室の建物である。それでも新しいものに触れる体験がまったくなかった子どもたちは、夢の実現を目の前で見つめる心境で開校を待ちわびた。オベーラ少年の語りで進む詩集は、この学校が彼らのコミュニティーにとりどんな意味を持っていたのか強く、おおらかに伝えてくれる。
収益当時世界一のカタログ販売会社による、慈善・博愛主義。現代に置き換えたら、さしあたりビル・ゲイツ会長の規模なんだろう。イラストが明るく、希望に満ちている。(asukab)
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amazon:R. Gregory Christie
- ローゼンウォルド氏は、自分の名前が学校名になることも嫌っていたそう
- 作者: Carole Boston Weatherford,R. Gregory Christie
- 出版社/メーカー: Scholastic Press
- 発売日: 2006/09
- メディア: ハードカバー
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