HIPPO! NO, RHINO! 自己主張の絵本

 絵本の表紙には、「HIPPO!――カバだ!」の声に顔をしかめる一頭のサイ。不服そうに、「ちがう、サイだよ!」とつぶやいている。動物園内の看板文字とほんのひとことのつぶやきでつづられるサイの心情物語『Hippo! No, Rhino (Alex Toys)』(邦訳『カバ!じゃない、サイ! (ほるぷ海外秀作絵本)』)には、「カバ」の矢印を掲げられてしまった「サイ」が懸命に自己主張して自尊心を取り戻すまでの姿が描かれる。すべては、間の抜けた管理係のおじさんのしたことに起因する。
 サイと同じような状況は、社会や学校の中でも十分に考えられる。米国では、おとなしければ影の薄いまま不利な状況に直面することが多い。主張しないと(=文句を言わないと)気づいてもらえない社会なのである。ことわざ(Squeaky wheel gets the oil.)だってあるほどだ。思慮に欠ける心寂しい社会だなあと思うけれど、自己主張は当然の権利として認識されている。でも、こういう人たちばかりが集まると、がーがー、ぎすぎす、ささくれた世の中になってしまうのよね。これでいいのか、どうなのか、今でもよくわからない。
 お話は、サイのことをサイとわかってくれる男の子がいて一件落着。でも、おとぼけ管理係のおじさんたら、またまた抜けたことをやってしまう……。
 水彩インクのイラストが、それとなく70年代風。管理係のおじさんも長髪で、出てくる人もなんだかビートルズみたいな人ばかり。顔色が緑だったり、黄色だったり、青だったり。少々癖のあるイラストかもしれない。(asukab)
amazon:Jeff Newman

  • hippo-rhinoなど「-o」で終わる言葉の余韻が楽しい

カバ!じゃない、サイ! (ほるぷ海外秀作絵本)

カバ!じゃない、サイ! (ほるぷ海外秀作絵本)