Tunjur! Tunjur! Tunjur! A Palestinian Folktale ものごとの正悪をおしえてくれる絵本

 『Tunjur! Tunjur! Tunjur!: A Palestinian Folktale』の主人公は、小さなおなべ。子どもが欲しい奥さんの「たとえ、なべでもいいから、子どもがほしい!」という願いがかなえられ、彼女の家にやってきた。成長ざかりで好奇心いっぱいのおなべはある日、一人で市場に行きたがり、「Tunjur! Tunjur! Tunjur!(カチャン、カチャン、カチャン!)」と音を立てながら出かけて行く。そこでおなべは金持ちに拾われて、彼の家に連れていかれる。おなべが気に入った金持ちの妻は中に蜂蜜をたっぷりつめたはいいが、おなべがふたをきつく閉めてしまい、蜂蜜が取り出せない。金持ちに捨てられたおなべは家に帰り、何が起きたのかは内緒で奥さんに蜂蜜をごちそうする。翌日、おなべは王さまの宮殿に出かけていった。おなべが気に入ったお后さまは中にお気に入りの宝石をたっぷりつめこんだはいいが、おなべは今度もふたをきつく閉めてしまい宝石が取り出せない。王さまに捨てられたおなべは、美しい宝石を家に持って帰るけれど……。
 もともとの題名は「魔法のどろぼうなべ」という、アラブ地方ではよく知られた民話らしい。タイトルからして「どろぼう」だから、耳を傾ける子どもたちは、おなべが「犯罪」を犯していることを承知で民話を楽しむのだ。「悪いことをしたらバチが当たるよ」の「バチ」の部分がとてもユーモラス。民話を通して、こうやって社会性を学んでいくんだなあ、とあらためて語りの力を教えられる。
 再話はシアトル近郊在住の、全米でも有名なストーリーテラーによる。イラストがレバノン出身、在米画家によるもので、なるほど中近東の乾いた熱い空気が鮮やかな色によく出ていたと思う。人物たちの目がきょろりと大きくて、これも子どもを魅了しているかも。「Tunjur!」のリズムや繰り返しが、民話らしくて楽しかった。(asukab)
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Tunjur! Tunjur! Tunjur!: A Palestinian Folktale

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