Beauty and the Beast アンジェラ・バレット画による「美女と野獣」の絵本

Beauty and the Beast』は、虚栄と偏見が花を咲かせた19世紀ヨーロッパを背景に「美女と野獣」を描く絵本である。言うまでもなく、イラストが絶品で美しい。
 事業の失敗が重なり、かつて富をもてあそんだフォーチューン家は田舎の寂れた小屋で厳しい生活を余儀なくされていた。父親は美しい三人娘を喜ばせようと再建を志し、街に戻ったが徒労に終わる。その帰路、不思議な城の庭園からバラ一輪をつもうとしたところ、城主の野獣を怒らせてしまい、命と引き換えに娘一人を連れてくる約束を交わす羽目になる。野獣の怒りを買った理由が、自ら頼んだバラの花にあったことから、末娘のビューティ(ディズニー版ではベル)は責任を感じ、野獣の城で暮らす決意をする……。
 お城の情景がとにかく魔法がかっていて、それはそれは夢のような描写だった。ここを見るだけでも、本書を手にする価値あり。お姫さま生活に憧れるすべての理由が、この数ページに詰まっている。夢見心地を味わった後、いつの間にか、わたしもビューティのように、見かけは醜くても心優しいはにかみ屋さんの野獣に魅せられていた。物語と絵の力強し。野獣の哀愁を帯びた後ろ姿、ところどころお城の一場面にぽつんと描かれる孤独な悲哀に、じーん。多彩とモノクロページが重なり合い、二人の対照的な存在が巧みに描き分けられていて、さらに感傷的になってしまうではないか。
 もとはフランス民話ということだけど、この19世紀版はより痛切でドラマチック――。魅惑の城に、ようこそ。(asukab)
amazon:Max Eilenberg
amazon:Angela Barrett

  • 文章、イラストともに詩的

Beauty and the Beast

Beauty and the Beast