ヴァージニア工科大乱射事件

 その男の子は8歳。言葉も生活もまったく違う、知らない国にやってきた。小さな頃から引っ込み思案だったこともあり、新しい環境にはなかなか溶け込めずにいた。学校でも、近所でも、きっとそう。異質な世界を享受できず、自分が異質になり、中学、高校であからさまないじめに合う。心模様は、どんなだったのだろう。韓国では、どんな絵本を読んでいたのだろう。渡米してからは、どんな絵本や本を読んでいたのだろう。そんなことが頭を駆け巡る。
 犯人像が日々、報道で浮き彫りにされる中、心がうずいた。彼が直面した状況が、痛いほどよくわかるから。移民の子どもの孤独。そこを乗り越えられなかった繊細な感性が、悲劇の要因になった。
 最愛の存在を失った家族の気持ちも、悲しい。子どもたちの大学は州外でもいいかなと思っていたけれど、ここは米国だ。地元大学に進み、週末をいっしょに過ごす家族風景が、ぐんとこちらに近づいてきた。そう、いつもいっしょがいいよ。若い頃には冒険を、なんて、そんなこと言える親じゃないことがよくわかった。