What Elephant? えっ、ゾウ?

 ある日、巨大なゾウが自分の部屋にやって来たら、あなたならどうする? 親友に話しても信じてくれない。自分もそんなことあるはずがないと、目の前で起きている事象が信じられずにいる。でも、ゾウは現実にここにいて、テレビを見たり、チョコレートチップクッキーを食べているんだよ……。こんな風に書くと『おちゃのじかんにきたとら*1のようなファンタジー絵本の印象が残るけれど、これは『What Elephant?』の意図からだいぶ外れている。「巨大なゾウが部屋にいる」部分は実は、「あまりにも陳腐なため、人々が認めようとしないこと、人々が見てみぬふりをしてしまうこと」の象徴。実際、社会でそんな状況に直面したら、あなたならどうする? 作品はそんな風に問いかけている。
 ジョージの部屋にゾウが住み着いた。親友のピップに話しても本気にしてくれない。自分でもそんなことありえないと思うので、ジョージはゾウなんていないことにして生活を始める。ジョージの部屋に遊びにきたピップが驚愕する、「えっ、ゾウ?」。でもジョージが「ゾウなんていない」と言うのでピップは、自分もゾウなんていないふりをして振る舞い始めた。ゾウを目撃した人々はみな立ち止まり沈黙して、超現実的な光景に、ジョージやピップと同じように、「自分がおかしいに違いない」と思い始める……。
 さあ、あなたなら声を大にして「ゾウがいる!」と言えるだろうか。娘といっしょに第三者となり、ことの次第を見届けた自分ならどうか。きっと子どもならいとも簡単に指摘できるだろうけれど、大人はどうかな。常識はずれなできごとを真っ向から受け入れる行為って、思考の域では簡単なことのように思えるけれど、いざ現実に直面すると躊躇するものだ。
 踏み絵のような絵本で、いろいろ考えさせられた。(asukab)
amazon:Genevieve Cote
http://www.genevievecoteillustration.com/

  • 昨年出版されたカナダの絵本

What Elephant?

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