REX カメレオンのレックス

 うちで「カメレオン絵本」といえば、有無を言わず『A Color of His Own』(邦訳『じぶんだけのいろ―いろいろさがしたカメレオンのはなし』)を指した。あのお目目きょろきょろのカメレオンくんこそ、カメレオンの中のカメレオンだったはずなのだが、『Rex』を読んでかなりの割合で人気配分が変わってしまった。英国発売からずっと注目していたので、今回やっと手にして娘と共にしあわせを味わった。かわいくて、愉快なお話だったよー。
 人気の秘密は、カメレオンという独自のキャラクター性もあるだろうが、お話の設定にもある。「レックス」というタイトルは、もちろん恐竜Tレックスを意識している。ということで、子どもたちにとってレックスは、恐竜的ヒーローであったりするのだ。

これは、レックス。
レックスは、クラスのペット。
まいにち、だれかが レックスを家にもってかえる。
とくべつなノートと いっしょにね。
このノートには、レックスが なにをしたか、書くことになってる。
もし 文が 書けなければ、 絵でもいいのよ。

 こうして月曜日からレックスが誰といっしょにどんな一日を過ごしたのかが女の子の語りで伝えられ、読者は「レックスノート」に描かれた「怪獣、または恐竜のような」レックスに笑いをこぼしながらクラスペットの一週間を追うのである。
 子どもの多感な想像力に勝るものなし。イラストがこの事実をユーモラスに証明してくれ、ちょっと喜劇を鑑賞しているかのようだった。鉛筆のかすれた描線とノートの罫線コラージュがぴったりと溶け合い、学校生活とか、放課後の過ごし方など、子どものいる風景が生き生きと表現される。夢中になった娘は読後、虹色のレックスを描いて切り抜き、虫かごに入れ、「自分だけのレックス」と得意になっていた。
 「絵本って、ほんとうにいいですね」――。そんな決まり文句が似合う絵本かな。(asukab)
amazon:Ursula Dubosarsky
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  • こちらは米国版。作者はシドニー在住、画家はロンドン在住というコンビ

Rex

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