Piano Starts Here: The Young Art Tatum 若き日のアート・テイタム

 『Piano Starts Here: The Young Art Tatum』は、ジャズピアノの神様アート・テイタムの生涯を語る絵本。理解のあった父親は機械工、母親は教会で歌っており、家にはピアノが置いてあった。この環境がまず神様を生んだ第一歩だろう。幼少期からとにかくピアノに魅せられ、ピアノから離れなかった日々がつづられている。視力がほとんどなく、まわりの友だち、教会の人々に支えられピアノに打ち込んだ様子が、彼の奏でた曲名とともに紹介され、イメージが抱きやすかった――"Moonlight Bay""Shine On, Harvest Moon""Memphis Blues""Tiger Rag""Humoresque""After You've Gone""Poor Butterfly"。教会で弾き、友人に頼まれ弾き、評判が上がってカフェやバーで弾き、そうしてラジオに取り上げられ、軽快で甘い音色は全米に知れ渡った。彼の華やかなジャズピアノが流れると、それだけでその場の気配が変わったのだろう。視力が無かったことで、持って生まれた感性が一方でさらに研ぎ澄まされたのではないかとも思う。後年は糖尿病に悩まされ、46歳で逝去。夜の仕事がどれほど体に響くか、年齢だけで察することができた。
 さらりとした水彩*1,*2が、程よくジャズの空気と溶け合った絵本。(asukab)


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Piano Starts Here: The Young Art Tatum

Piano Starts Here: The Young Art Tatum