つばさを ちょうだい

 お日さま、花たば、夏草、さざ波……、自分の好きなものばかりが散りばめられた絵本に出会いました。きらきらとまばゆい宝石箱のようなその絵本は、『つばさをちょうだい』。男の子と小さな天使が繰り広げる、可愛らしい夏のファンタジーです。
 木目の美しい板に色鉛筆と水彩で描かれたイラストには、温もりが溢れています。主人公たちの「ふっくらほっぺ」にあどけなさがのぞき、大人はその表情だけでも、とろんととろけてしまうのですけれど。*1

ぼくが かいた てんしが
えから でてきて いったんだ……
「つばさを ちょうだい」

 ジャケット・フラップにはこの3行。表紙をめくった見返しにバラ模様の翼が針金ハンガーに掛けられていて、どんな翼をお目にかけましょうか……と誘っているかのようです。波の翼、草の翼、ガラスの翼、光の翼、花の翼……さて、このほかに、どんなユニークな翼が天使の背中に生えるのでしょう。それは絵本を開いてからのお楽しみ。
 独創的な描線が木目の柔らかさとしっくり融合し、カラフルなイラストは洒落たアートとしても異彩を放ちます。昼下がり、木漏れ日の下で夢を見させてもらう絵本――。2人のささやくような大人モードのおしゃべりも、とてもよかった。今年一、二を争うお気に入り絵本になりました。(asukab)
amazon:ハインツ・ヤーニッシュ
amazon:ゼルダ・マルリン・ソーガンツィ

つばさをちょうだい

つばさをちょうだい

*1:天使が、娘にそっくりなのです。