Sourpuss and Sweetie Pie こまったちゃんとにこにこちゃん

 『Sourpuss and Sweetie Pie』は、『The Hello, Goodbye Window (Boston Globe-Horn Book Honors (Awards))*1(邦訳『こんにちは さようならのまど』)に続く2冊目。
 おばあちゃん、おじいちゃん宅にやってきたこの女の子は、1冊目と同じ女の子なのだろうか。成長を含めても、あまりの変貌ぶりに少々ショックを受けた。
 人間誰でもやさしく素直でいられるときもあれば、ごきげんななめのへそ曲がりになるときもある。個人差はあれど、感情の起伏は人間の本質である。とはいえ、このジキルとハイドのような激しい性格の差異は極端ではないかというのが正直な感想だった。女の子が、まるで別人のように描かれている。単なる「気分」「気分屋さん」の描写には見えない。
 子どもの感情(エモーション)を取り上げた背景には、情緒障害の多い米国児童社会の投影があるのではないかと思えた。両親の扶養能力がないゆえ基本的な家庭生活を体験していない、シングルファミリーゆえ子どもに負担がかかっている、自分の生活に手一杯で子どものことは学校まかせ――。職場の小学校にはこのような子どもたちが多く――非常に感情的、人の話を聞かないで喋ってばかりいる、ささいなことでけんかばかり、いったん爆発するとおさまらないなど――学校では情緒障害を絵に描いたやりとりばかりが続いている。
 前作で幸せな子ども像を描いたのとは対照的に、今回はそうでない子どもたちの一面も描かれる。本来幸せなはずの子どもが実は大人の作り出した自分勝手な環境により不幸せになっている構造を、それとなく示したかのように。
 シリーズにするなら、甘さを保って欲しかった。それが子どもの真の姿であるし、天使のような存在でなくして、どうして「子ども」と言えるだろう。女の子の年齢からして、もう手がつけられないほどのカンシャクを起こす年齢でもないはずだ。幸福な一冊目とのギャップに、ちぐはぐな印象が否めなかった。(asukab)
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Sourpuss and Sweetie Pie

Sourpuss and Sweetie Pie