グレート・グランマの死

 先週、義祖母が亡くなった。老衰、享年96歳。ここ数年は施設で車椅子の生活を送っていた。主人に「家族で集まるのか」と尋ねたら、ノーとの答え。告別式はせず、一人娘である義母が法的な手続きを済ませ、誕生地である隣州に購入した墓地に霊を収めるという。米国の、わりとよくある死の形だ。
 ここでは、一人暮らしの老人が多い。家族にはそれぞれプライベートな生活があるので、高齢の両親といっしょに住むという話はあまり聞いたことがない。きっと、アジア系など一部の移民コミュニティーや農業地域では、大家族での生活を大切にしている人々もいるのだろうが。一般的には歳をとっても一人で暮らし、定期的に子どもが親を訪ねて様子や面倒を見る。老人たちは、友だち同士で食事の準備や買い物をして助け合う。近所の人が、買い出しやごみ出しを手伝うこともある。義母だって70歳を過ぎてもフリーウェイで車を走らせているのだから、独立心は当たり前なのかもしれない。かなりの高齢で一人暮らしが難しくなると、施設に入り死を迎える。家族が死亡通知を受け、身柄を引き取りに行く。その後、一族で集まり式を営むかは、それぞれによるだろう。
 何年か前、家族で義祖母の施設を訪ねた。陽だまりで車椅子に首をもたれ昼寝をしている入居者たちの一列は、天国へ昇る順番を待っているかのように見えた。
 グレート・グランマの死は、子どもたちには伝えていない。まだ「死」って、何かわかっていないだろう。いつか息子に読んだ『ぶたばあちゃん』。ここで読もうかなと思いながら、読めずにいる。
 これは、オーストラリアの絵本。その形は欧米的なのかもしれないけれど、老人の「死」を描くとても優れた絵本だと思う。死期を覚ったぶたばあちゃんが、死に向かう準備を始める姿には涙が止まらない。いっしょに住んでいる孫娘は、最後の思い出作りに心を込める。甘くやさしい水彩画が静かな死を描き、切ないけれど温かい作品である。秋の自然描写も美しい。今夜あたり読んでみようかな、グレート・グランマの思い出を伝えながら。(asukab)

Old Pig (Picture Puffin S.)

Old Pig (Picture Puffin S.)

四季の絵本手帖『スニッピーとスナッピー』

スニッピーとスナッピー

スニッピーとスナッピー

 スニッピーは女の子の野ねずみ、スナッピーは男の子の野ねずみです。なかよし野ねずみ二匹の兄弟はある日、お母さんの青い毛糸玉を転がしてどこまで行けるか冒険を試みました。行き着くところにはチーズがあるかもしれないと思うと、二匹の心は知らずと弾んでしまいます。版画風白黒のイラストは躍動感に満ちあふれ、なだらかな丘を登って降りる二匹の姿からはワクワクする気持ちが転がり込んでくるようです。「ころんと のぼって、ころんと おりて、のぼって のぼって、また おりて……」の調子は、山越え谷越えの曲線を生かしたイラストの描かれ方にも表れ、子どもは軽やかなリズムとともに体を揺らしながら聴覚、視覚への刺激を楽しみ、イラストを指でなぞりながら触覚をも満足させます。雲の流れ方、野原の広がり方は独特の遠近感を生み出し、さらに先の冒険へと二匹と子どもを導きます。
 そうやって着いたところは、人間の家でした。今までに見たこともない物との遭遇の様子は、ねずみならではの視点で描かれます。憧れのショクリョウダナを目の前にして訪れた危機にはお父さんねずみが登場し、二匹に大切なことを諭すという学びもありました。
 どこかでこんな野ねずみ一家が暮らしていると想像するだけでも心が和みます。お父さんねずみの読む「ねずみしんぶん」には広い世の中のことが書かれていて、ユーモラスなねずみ社会のありようが満喫できます。(asukab)