四季の絵本手帖〜春の風にさそわれて〜

 モノトーンの描いた冬の風景に替わり、黄色や桃色、すみれ色、若草色が控えめに顔をのぞかせ、にわかにおしゃべりを始める春――。柔らかな日ざしと風の温度は、誰の心をも戸外に誘います。一年中外遊びの好きな子どもたちにしてみても、この季節の明るさや空気のにおいは、空に向かって飛び出したくなる特別なエネルギーを与えてくれるのでしょう。草の芽も花も、鳥も動物も、感じていることはきっと同じです。新しい出会いが待つ春は、生命を吹き返した色とりどりの自然の中で、子どもや動物たちを祝福し始めます。
 春の野草の中でも「たんぽぽ」はうれしい春の象徴となり、にぎやかに草地を彩ります。花輪を作り、たんぽぽの玉子焼きでままごと遊びをし、種を風に飛ばし……、この黄色の放つ明るさは、まるで春の水玉模様となって子どもの心で弾けているかのようです。見かけたら、いっしょに遊ばずにはいられない友だちのような親しみを投げかけながら。
 子どもとお散歩に出かけ、これから始まる緑の季節にあいさつを交わしましょう。香る草花、動き始めた虫たち、さえずる小鳥たち――自然の中に生きる仲間たち――との出会いは、子どもの一日ばかりでなく、野原、道ばた、街角すべてを淡く柔らかい春の息吹で包み込んでいます。(asukab)