四季の絵本手帖『はらぺこあおむし』

はらぺこあおむし エリック=カール作

はらぺこあおむし エリック=カール作

 鮮やかなコラージュが一週間食べ続けるあおむしの姿を描く、楽しい仕掛け絵本です。空腹という共感せずにはいられない状態のあおむしを追いながら、子どもは色彩豊かな食べ物の世界に入り込みます。笑顔の太陽の下、生まれたばかりのあおむしが食べた物は、月曜日にりんごを一つ、火曜日になしを二つ、水曜日にすももを三つ、木曜日にいちごを四つ、金曜日にオレンジを五つ……食べた形跡を穴に残す仕掛けは臨場感たっぷりで、小さな穴の存在は、それだけでも十分に子ども心をくすぐります。土曜日の見開きにはチョコレートケーキやペロペロキャンディーなど子どもの好きな物ばかりが並ぶので、一目でお気に入りになるかもしれません。小さな生き物が自分と同じようにおなかをすかせて食べる姿は、親近感となって子どもの心に迫ります。
 宝物がちりばめられたように興味の対象がつまった絵本は、さまざまな楽しみ方を提供します。色、数、曜日、あおむしの成長など、多色使いの美しいイラストを通して紹介される生活概念や自然科学は子どもの好奇心を大きく揺さぶることでしょう。食事の話をしたり、カレンダーを眺めたり、数をいっしょに数えたり、絵本をきっかけに始まる会話からは次々と遊びが生まれます。フェルトであおむしの指人形を作り、一週間を再現してみるのも楽しいでしょう。そのまま戸外に出て、春の自然に親しむことも忘れたくありません。(asukab)