四季の絵本手帖『さんびきのくま』

The Three Bears

The Three Bears

 はっきりした絵とわかりやすい言葉で、有名なロシア民話を語る絵本です。ストーリーテリング(語り)に見られるようなシンプルで短い表現が明るいイラストとほどよく調和し、お話のおもしろさをいっそう引き立てています。
 緑茂る森の一軒家に慎ましく暮らすのは、くまとうさん、くまかあさん、くまぼうやの三匹のくまたちです。ある日のこと、熱いおかゆが冷めるまでくま一家は森へ散歩に出かけますが、彼らの留守中にひょっこりやってきたのが金髪の女の子、きんいろまきげちゃんでした。
 かわいらしい女の子は見かけによらず大胆な行動を取るので、子どもは彼女に釘づけです。おかゆのにおいに誘われて家に入りこみ、おなかがすいていたとはいえテーブルの上に置かれていたおかゆを食べてしまうなど誰が想像できたことでしょう。ところが、家の中での自由奔放ぶりは同時にくま一家のささやかな暮らしを紹介することにもなり、子どもは滑らかな繰り返しのテンポのよさに魅せられてしまうのです。三匹の生活用品は質素で温もりに満ちた日々を反映していて、家庭のあたたかさを示します。子どもにとり、おわん、スプーン、椅子、ベッドなどに見られる大中小の大きさの相似形は興味深く、無意識のうちに「親子」の姿を重ね合わせていることでしょう。
 くま一家が帰宅して女の子はいったいどうなったのか、後日談を考えることも楽しいひとときとなります。女の子の残していくお花が、彼女の茶目っ気に親しみやすさを添えています。(asukab)