四季の絵本手帖『まっくろネリノ』

まっくろネリノ (世界の絵本)

まっくろネリノ (世界の絵本)

 ネリノは体が黒い小鳥です。ピンク、紫、黄色、緑ときれいな色をしている兄さんたちは、まっくろだからといっしょに遊んでくれません。「ぼくはいつもひとりぼっちで、じっとしてるんだ」――どうしたらきれいな色になれるのか、ネリノがひとり悩む場面は、寂しさが子どもを包みます。ところが、ある日、きれいな色であることがあだとなり、兄さんたちは鳥かごに閉じ込められてしまいました。心配したネリノは、自分が黒いことを利用した救出作戦を思いつきます。
 黒いネリノ、夜の救出、かごの中のきれいな兄たち……どのページも色を活用してネリノのユニークさを存分に描き出しているので、子どもの心には色の印象が深く刻まれることでしょう。色を使った救出アイデアはたちまち子どもを魅了して、大いに納得させてしまいます。
 冷たくあしらわれたにもかかわらず兄たちの安否を気づかったネリノの優しさは、外見だけでものごとを判断し、相手の気持ちなど知ろうともしなかった兄たちの愚かさをことごとく退けました。ネリノを誇らしく感じるのは兄や両親だけでなく、子どもも同じことでしょう。他者を認める相互理解の大切さは、前半の寂しさ、後半の嬉しさというネリノが抱いた2つの気持ちを通して、まっすぐ子どもの心に伝わります。最終ページの兄弟5羽1列の姿には、みんないっしょになった喜びが並んでいるかのように見えます。(asukab)