四季の絵本手帖『ザザのちいさいおとうと』

ザザのちいさいおとうと

ザザのちいさいおとうと

 弟や妹が生まれると、お兄ちゃん、お姉ちゃんになる子どもは生活環境の変化に直面し、動揺が隠せません。今まで独占できた両親との時間が一気に減るのですから、疎外感すら抱くのも当然といえるでしょう。しまうまの男の子ザザも、弟が生まれてお兄ちゃんになったばかりです。ママやパパは赤ちゃんのお世話に忙しく、親戚の人たちもみな赤ちゃんに注目してばかりの状況を見て、同じ境遇の子どもは即座にザザの気持ちを察します。
 けれども、赤ちゃんの存在は、子どもにさまざまな体験を施す人生の先生の役割を果たしてくれます。赤ちゃんとふれあうことで小さな命の存在を知り、食べて、寝て、遊んで成長する人間の姿が学べます。 実際に赤ちゃんをだっこしてみたらとママからアドバイスされたザザは、弟をおもちゃの車に乗せ、積み木で遊んでみて、赤ちゃんのすばらしさを体感しました。「おとうとたのしい、あかちゃんかわいい」――自然に出てきた一言は、ザザの成長の証でしょう。赤ちゃんのいる生活は大変ですが、楽しいこともたくさんあることをザザは弟とのふれあいから学びました。
 原色使いの鮮やかなイラストには、赤ちゃんとの生活に欠かせないものがたくさん描かれています。子どもはそれを眺めながら赤ちゃん時代の記憶の糸をたぐり寄せ、再びその存在を確かめるのかもしれません。見返しのイラスト群を作品中に探す遊びも楽しいでしょう。(asukab)