米国暮らしの絵本手帖〜米国絵本体験、プレスクールで〜

 小さな頃からの言葉を通じてのふれあいは、心の教育、同時に言葉の教育に直結します。当たり前のことなのですが、なかなか気付けずにいました。言語は生活の中で自然に身に付けるもの程度にしか考えていなかったわたしは、特に子どもたちがプレスクールに通い始めた頃から、英語と日本語の置かれた環境や言語に対する意識の違いを少しずつ感じるようになります。もちろん、子どもが遊びや絵本といった生活体験を通して言葉習得をすることに変わりはないのですが、言葉に対する意識――「豊かな言語体験(英語)を通しての人間教育が、子どもの成長(あるいは、大人であっても)に大きく作用する」という常識が、人生の大きな目標を示していることに気付かされたのです。読み書き重視の能力主義をはるかに超えた人生の思想は、人間社会で生きる意味をも同時に教えてくれました。
 自分は何を感じ、その気持ちをどう伝えるのか――すべては生活の基本となる言葉のコミュニケーションから始まります。「心=言葉」を大切にする概念は、表現力が重視される欧米社会の反映なのかもしれません。豊かな人間性は豊かな表現力によって映し出されるとする社会では、言葉の教育はないがしろにはできない、人間の、そして社会の核となる部分なのでしょう。
 言葉のあり方など日常の中であまり意識していなかったわたしは、真のアーツ(教養)を味わうためには単に機能としての言語だけでなく、心といっしょに言葉を大切にする教育が不可欠であることを知り、やんわり、けれども、じんわりと刺激を受けました。(asukab)