四季の絵本手帖『おさるとぼうしうり』

Caps for Sale: A Tale of a Peddler, Some Monkeys and Their Monkey Business (Young Scott Books)

Caps for Sale: A Tale of a Peddler, Some Monkeys and Their Monkey Business (Young Scott Books)

 一風変わったイラストで、世にも不思議な風貌の帽子売りといたずらなお猿たちの騒動を描く愉快な絵本です。帽子売りは四色の帽子をそれぞれ四つずつ高々と頭の上に積み上げ、町から町を訪ね歩き商売をしています。帽子のタワーを乗せて、「一個、五十円」で売り歩く姿は見るからにこっけいで、子どもは即座に何かしら予兆を感じとっていることでしょう。
 事件は帽子売りが木の下で昼寝をしていた間に起こりました。木の上にいたお猿の一群が、売り物の帽子をみな取り上げてしまったのです。帽子を返すように要求しても、お猿たちは「ツー、ツー、ツー」とのんきに声を出し笑顔で帽子売りのしぐさをまねるだけです。お猿たちの気楽な反応は帽子売りの怒りをエスカレートさせると同時に子どもの笑いを誘い、帽子を取り戻したい人間と猿の知恵くらべは最高潮を迎えます。ここでのやりとりは、ジェスチャーを交えて読み進めたいところです。帽子売りとお猿の役を決めて展開を追うと、ちょっとした劇にもなるでしょう。最後に帽子売りはどうなったのか――単純で意外な解決方法に子どもはさらに笑いの渦に埋もれます。あっけらかんとした帽子売りの反応に、お話のおもしろさは余波となって広がります。
 帽子売りの口ひげ、帽子のタワー、くすんだ空色、みかん色、黄土色を基調とした独特なイラストの風合いなど、一度読んだら忘れられない不思議なイメージが残ります。(asukab)