四季の絵本手帖『ラチとらいおん』
- 春の19ページ ラチとらいおん (世界傑作絵本シリーズ)
- 作者: マレーク・ベロニカ,とくながやすもと
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1965/07/14
- メディア: 単行本
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ラチは気の弱い男の子です。犬を見ると逃げ出し、暗い部屋には一人で入れません。ときには友だちさえ怖く感じてしまうので誰もいっしょに遊んでくれず、いつも泣いてばかりいました。犬や暗闇などは、子どもが日常で直面する典型的な恐怖の対象です。怖がるラチにたちまち共感した子どもは、ある日突然現れたライオンによって、ひ弱なラチがたくましく成長する過程に大きく勇気づけられることになります。
ライオンは、心と体はひとつであることをよく知っていました。体が強くなれば、心も一緒に強くできます。こうして体操から始めたトレーニングは、少しずつ効果を表し始めます。頼もしいライオンに助けられながら心身ともに、日に日に変わっていくラチの姿は見ていてさわやかです。ラチの可能性は、次々と証明されていきました。
ライオンがラチを応援してくれたように、子どもの成長には心の支援が必要です。ラチとライオンの師弟のような関係は、例えてみれば人間の心の成長に必要な親子関係ともいえるでしょう。すばらしいコーチに出会えたラチは、幸せな男の子です。
力強く成長したラチは、最後に再び涙しました。子どもにとり、涙は特別な意味を持つものです。弱虫だったときの涙、強くなってから流した涙――大粒の涙をこぼして泣くラチの姿は、どんな状況でも見過ごせません。この作品ではラチの流す涙も、子どもの心とひとつに同化しています。(asukab)