四季の絵本手帖『げんきなマドレーヌ』

げんきなマドレーヌ (世界傑作絵本シリーズ)

げんきなマドレーヌ (世界傑作絵本シリーズ)

 パリの寄宿学校を舞台に、元気な女の子マドレーヌの明るい生活ぶりを描いたシリーズ第1話となる絵本です。つたのからんだ古い屋敷には、先生といっしょに12人の女の子が住んでいました。
 彼女たちが黄色いつば広帽をかぶり制服姿で歩く姿は、子どもの目にはさぞかし印象に残ることでしょう。家族と離れ、食事、歯磨き、就寝……と、6人2列に並んで行動する規律ある生活ぶりは、自分の日常とはなじみが薄いだけに興味津々の光景です。どんな天候でも毎朝必ず9時半に並んで散歩に出かけるとは、仲間入りしたい気分にもなるというものです。
 ミス・クラベルは、ふだんは何ごとにも驚かない先生です。マドレーヌが盲腸炎に倒れた一大事には走りに走り、落ち着いて対処した頼もしい存在でした。ものごとを冷静に正しく判断する人は、子どもの世界に不可欠です。安心の象徴ミス・クラベルがマドレーヌたちと寝食をともにしているからこそ寄宿生活は穏やかで、子どもも同じ気持ちで展開を追えるのでしょう。
 マドレーヌの手術、病院生活、残った11人のお見舞い風景には、女の子の思いやり、うらやみといった気持ちが多分に表れていてほほえましい限りです。クローズアップの描写は背景に黄色のみを用い、まるで12人の陽気なおしゃべりが聞こえてきそうです。深みのある色合いで描かれたパリの街並みには、しっとりと落ち着いた空気が流れています。(asukab)