四季の絵本手帖『ゆかいなゆうびんやさん―おとぎかいどう自転車にのって』

ゆかいなゆうびんやさん―おとぎかいどう自転車にのって

ゆかいなゆうびんやさん―おとぎかいどう自転車にのって

 ゆかいな郵便屋さんが童話の主人公・脇役たちに手紙を届けるユーモアあふれる仕掛け絵本です。子どもが喜ぶ一番の工夫は、隔ページについたポケット型の封筒ページです。実際にその中から手紙を取りだし受取人のような気分で内容を読むことができるので、子どもはうきうきと絵本の中に溶けこんでしまいます。手紙を受けとるのは、三匹のくま一家(「三匹のくま」)、お菓子の家に住む魔女のおばあさん(「ヘンゼルとグレーテル」)、大男(「ジャックと豆の木」)、シンデレラ(「シンデレラ姫」)、おおかみ(「赤ずきんちゃん」)といった面々で、彼らが登場するお話を知っていれば、もちろん楽しさは倍増するでしょう。手紙はイラストや文面の細部にまで趣向が凝らされ、招待状、広告や勧誘はがき、献本送付状、勧告状、お誕生カードなど、もとになる童話の内容や人物の性格に合わせてさまざまです。手にした一通の手紙を通して、おとぎの世界に潜りこめる時間と空間の充実感は、子どもにとっても、かつて子どもだった大人にとっても心地よさ以外の何ものでもありません。縦横無尽に子ども心をくすぐる秘密は、「手紙」という行為の中にも潜んでいるのかもしれません。ひとつひとつの封筒の中には、宝物を手にするようなひそかなときめきが隠されています。
 この絵本は、女の子の八歳のお誕生日に贈る絵本として最適です。その理由は、最終ページにあたたかく描かれています。(asukab)