四季の絵本手帖『ふたりはともだち』

ふたりはともだち (ミセスこどもの本)

ふたりはともだち (ミセスこどもの本)

 がまくんとかえるくんの日常が、平明な文体でささやかに語られるお話集です。『はるがきた』は、かえるくんががまくんを起こしに訪ねる場面から始まります。お日さまがきらきら輝き、春がやってきた喜びでいっぱいのかえるくん。その姿とは対照的に、がまくんはまだベッドで寝ていたいと不平をもらしています。
 玄関のわきで、四月の透き通った光を浴びながら高らかに季節の到来を宣言するかえるくんと、眠そうに目をこするがまくん――二人の性格の違いは、ときに嘆かわしくときにユーモラスで、等身大の生活の中に描かれるだけありリアルです。子どもは二人の姿から実際の人物を思い起こすようです。彼らの世界では、がまくんもかえるくんもすでに現実の人になっているのかもしれません。再びベッドにもぐりこんだがまくんを起こそうと、かえるくんがカレンダーに仕掛けた工夫は子どもを喜ばせるしゃれたたくらみでした。もちろんがまくんはあっさりと目を覚まし、二人は春の様子を調べになかよく並んで外に出かけていきました。
 二人のやりとりには、単純な中にも味わいがあり、子どもを大きくうなずかせる真理があります。春夏秋冬……流れる季節の中で、がまくんとかえるくんは、いつも友だち同士――そう思えば人間の日常も、何かゆったりとした優しいものになりそうです。表紙の二人はどんな会話を交わしているのでしょう。考えるだけでも、ほのぼのしてきます。(asukab)