四季の絵本手帖『やあ、ともだち!』

やあ、ともだち!

やあ、ともだち!

 言葉をかけること――このコミュニケーションの始まりが、すてきな友だち関係の始まりであることを教えてくれる、元気のもらえる絵本です。主人公は、2人の男の子。お互いまったく違う性格のように見えます。スニーカーのひもがほどけた、ショートパンツ姿の男の子が左ページ、一方右ページには、カーディガンを着た、ちょっぴり寂しそうな男の子がそれぞれ登場します。
 左ページの男の子が「やあ!」と声をかけると、右ページの男の子はびっくりした顔つきで「えー?」と反応。もう一度「やあってば!」と声をかけると、今度は「だれにー?」。「きみだよ!」「ぼく?」――言葉をかけるたびに、驚いたり、どきどきしたり、2人の表情にはシンプルな言葉といっしょに素直な心模様が表れます。やりとりをするうちに、何だかどんどん気持ちが弾んでくることは、きっと子どもも同じでしょう。友だち作りは、小さなひとことで始まることをあらためて知らされるかのようです。
 イラストの一部となって記される大きな英語表記にはぴったりの日本語が付けられ、絵本全体の雰囲気は原書そのもので味わえます。沈んだ気持ち、弾む気持ちのやりとりはページを追ってリズムのように流れ出し、絵と言葉が作り出す一瞬一瞬の心の機微が友だちのすばらしさをたたえます。(asukab)