四季の絵本手帖『かいじゅうたちのいるところ』

かいじゅうたちのいるところ

かいじゅうたちのいるところ

 ある晩のこと、いたずらが度を越しておこられた男の子マックスは、反省するようにと寝室にほうりこまれます。大はしゃぎという興奮の後に静寂を味わえば、イマジネーションも無限に生まれてくるというものでしょう。部屋にはいつのまにかニョキリニョキリと木がはえはじめ、あたりはジャングルと化していました。獣の衣装を着て走りまわる冒頭のマックスの姿に、子どもはすでに遊びの世界に引き寄せられていますが、そのマックスがジャングルにいるとなればここは冒険を期待するしかありません。さっそく船に乗りこむと、着いた島には強暴さと愛嬌を合わせ持つ怪獣たちが待ちかまえていました。
 ギョロギョロの黄色い目玉、ギザギザの鋭い歯と爪の持ち主たちを自在にあやつるマックスはたちまち彼らの王さまとなり、月光の下、怪獣たちと勇壮に踊り始めます。見開き6ページイラストのみの遊びの光景は壮観で、影の感じられる空間には解放感と同時に静けさも漂います。からだ全体を拍子にゆだねるマックスの姿は、子どもの本能そのものといえるかもしれません。
 冒険が終わりに近づきそろそろ家のぬくもりが恋しくなった頃、ふと気が付くと部屋のテーブルの上にはあたたかい食事が置かれていました。湯気の上がる料理は、幸せな子ども時代の象徴です。冒険の後は、また格別の味わいだったことでしょう。(asukab)