『Vegan Virgin Valentine』by Carolyn Mackler 読書ノート

 『Vegan Virgin Valentine』を読む。
 マラ・バレンタインは成績最優秀オールA、17歳の高校生。学生自治会など積極的に課外ボランティア活動も続け、すでにイェール大学への進学が決定している。最後に目ざすのは成績評価平均値によって決定される卒業総代の座。最終学年を迎え、マラはこの座を元ボーイフレンドのトラビス・ハートと争っていた。歯科医の父親、大学でファンドレイジングにいそしむ母親はもちろんマラを誇りにしている。そんなマラには20歳近く年の離れた姉エイミーがいた。自由奔放な彼女は大学を中退し、全米を点々。コロラドでスキーのインストラクターになろうとしたり、カリフォルニアでワインの醸造を学ぼうとしたり、夢がころころと変わる。マラが生まれたばかりの頃、エイミーはひとり娘ビビアンをもうけた。その後もエイミーの放浪癖は無くならず、両親は大学卒業はとうにあきらめ、ただどこかに落ち着いて欲しいと願うばかりだった。エイミーがコスタリカにサーファーのボーイフレンドを追って行こうとした際、英語の教育機関がまったくないことからマラの両親はとりあえず孫ビビアンを引き取ろうと決意する。こうして、1歳違いの叔母となる優等生マラと姪にあたるビビアンの生活が始まった。
 Vことビビアンは母親の気ままな生活に振り回されたこともあり、タバコ、マリファナも吸うすれっからしの16歳だった。何でも完璧にこなしてきたマラの生活に性格もスタイルも正反対のVが現れ、すべてが思い通りに運ばなくなる。転校初日、Vはトラビスに接近し、マラは激怒した……。
 自分と180度正反対の人間とどう関わっていくか――。マラとVの性格と置かれた状況に魅せられて一気読みした。作者はサウス・ダコタで10年前、実際に同年齢の叔母・姪関係の女性に出会い、以来この家族関係を小説の題材として温めてきたそうだ。こういう素材って作家にしてみると興奮する出会いなんだろうなあ。タイトルの「ベーガン、バージン、バレンタイン」とはマラのこと。何でも1番になることを生きがいとし、両親と学校の誇りとして正しいことを行ってきた完璧主義者のマラがVとの出会い、アルバイト先のコーヒーショップオーナー、ジェームズとの予定外の恋愛を通して価値観を変えていく過程が、彼女の一人称で語られる。点取り虫、おりこうさんのマラが、行く先々で問題児とされていたVの魅力に気づくエピソードが胸にじんとくる。温かい両親の視線も見逃せない。子育てに大切な姿勢が、Vや母親の言葉を通して伝わってきた。
 プリンツ賞オナーを受賞した作者の『The Earth, My Butt, and Other Big Round Things』と同じ調子ということなので、もちろんそちらも読まなきゃと読後、(また、こんなおもしろい物語が読めるのかと思うと)小躍りしたい気持ちになった。ジェームズの存在が、ちょっとうまくいき過ぎというか、スムース過ぎる感じがしたけれど、それでも2人の関係は、コーヒーのメッカに住んでいることもあり、こんな感じだろうと熱く想像しながら読みふけった。(asukab)

Vegan Virgin Valentine

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