大人だったら、さらに味わえる絵本#3 スースのきみの行く道

 スース最後の作品が『Oh, the Places You'll Go! (Classic Seuss)』(邦訳は『きみの行く道』)。韻を踏んでいてもナンセンスな言葉遊びは意味がない――一部教育者からそんな指摘を受けながらも、英語を学び始める子どもたちには必須とされている『The Cat in the Hat (Beginner Books(R))』の生みの親がスースである。賛否両論はあるにせよ、その評価は全米図書協会が絵本のコルデコット賞や児童読み物のニューベリー賞以外に2006年から、子どもの言語習得に効果をあげる児童書に与える賞としてスース賞を設置したことに結びつき、スース作品の社会的評価は揺るぎないものになった。
 作者晩年のこの作品には、これから人生を歩み始めようとする子どもたちに向けられたメッセージが(おなじみの)韻を踏む詩の形で表されている。きみの行く道には困難が待ち受けているけれど、進んで行くのは君自身だよと教えてくれる、いわば人生の指南絵本である。
 大人が読めば、人生を振り返るきっかけになる。わたし自身、「待つ」という受け身の生き方をしているかもと気づかされた。夜、家族の前で朗読したら主人がぜひ授業で使いたいと言っていた。ある評者に言わせると、小さな子どもにわざわざ人生の苦難を教えることもないということだったけれど。そう考えると、これはやっぱりある程度大人になった子どもに適した絵本なんだろう。
 邦訳も見かけたことがあったので調べてみたら、やはり詩人による訳で出ていた。そう、こういう作品は言葉の芸術家がやらなくちゃ。でも、品切れのようなのでさっそく復刊を希望したい。米国ではロングセラー絵本。7月26日現在、ニューヨーク・タイムズ紙による全米絵本売り上げトップ10に296週入っているということは……、単純に1か月を4週間で計算すると、74か月。約6年以上もトップ10リスト入りしてるって、これはすごいことだと思う。こういう絵本こそ、手に取りたいときにすぐ手に取れるようにしておくべき絵本じゃないか。日本語で読むと、またしんみりくるんだろうなあ。(asukab)

きみの行く道

きみの行く道