ちっちゃなアレックスと夢のレモネード屋さん

 日本で最近発売になった『ちっちゃなアレックスと夢のレモネード屋さん』は、英語でも話題の絵本。こちらの絵本・児童書読書サイトで紹介されていたので、さっそく甘酸っぱくて冷たいレモネードをうれしそうに注ぐアレックスの姿を想い描き、原書『Alex and the Amazing Lemonade Stand』を手にした。
 小さな子どものレモネード売りは、米国コミュニティーの夏の風物詩かもしれない。住宅街を歩いていると、前庭に置かれたテーブル越しに子どもがうれしそうに「レモネードいかがですか?」と声をかけてくる。でも、アレックスのレモネード屋さんは夏の楽しみだけではなかった。売り上げは病院に寄付をして、自分や他の子どものたちの病気の研究をしてもらおうとしたのが彼女のレモネード屋さんだった。
 小児ガンという重い事実を背負いながら、アレックスはレモネード1杯を売る。彼女は4歳にときにこの計画を思いついたというから驚きである。その勇気、やさしさ、賢さに胸を打たれない人はいないだろう。彼女のことは新聞に取り上げられ、1人の女の子が始めたレモネード屋さんは、全米中、同じ境遇にいる子どもたちに広がっていった。みんなでレモネードを売れば、お金もたくさん集まり、それだけ早く研究が進むかもしれない、と。
 絵本には3年間にわたる小さなレモネード屋さんの活躍が記してある。両親とアレックス作の韻を踏んだ明るい詩が、彼女の笑顔をさわやかに映し出す。可愛らしい巻き毛は薬の副作用のため抜け落ちてしまったけれど、澄んだ青い目はそのまま。可憐な花冠をつけたイラストがかわいらしかった。
 アレックスは昨年8月、静かに息を引き取った。享年8歳。でも彼女の意思はレモネード屋さんを通してみんなに伝わり、今も生きている。邦訳には写真入りでアレックスの紹介が載っているそう。わたしは「夢のレモネード屋さん」という名称が大好き。言わずもがな、涙なしでは読めない絵本。(asukab)

ちっちゃなアレックスと夢のレモネード屋さん

ちっちゃなアレックスと夢のレモネード屋さん

Alex and the Amazing Lemonade Stand

Alex and the Amazing Lemonade Stand