『The Earth, My Butt and Other Big Round Things』by Carolyn Mackler 読書ノート

 『The Earth, My Butt, and Other Big Round Things (Teen's Top 10 (Awards))』の読後感想をほやほやのうちに記そうと少々あせる。うん、素直に感動〜、どっぷり楽しくて、ためになる作品だった。再び一気読み。一人称の語りは、どんどん読ませてくれる。キャロリン・マックラー・ファンクラブを結成したい心境になった。
 バージニア・シュリーブスは名門私立高校に通う10年生。シュリーブス家必須のフランス語を除き学業はトップクラスだが、ぽっちゃり気味の体型を過剰なまでに気にしている繊細な女の子だ。スポーツ好きの父親はIT産業に従事する会社役員、母親は今をときめく思春期専門の心理学者でともに多忙な生活を送る。容姿端麗、加えて母校の誇りとなる成績で大学に進学した姉、兄と、上中流(アッパー・ミドル)クラスの生活を満喫する両親――。何ごとにも完璧な家族を持ち、ひとり疎外感を抱きながらもバージニアは彼女なりの決意を持っていた。「太った女の子の鉄則集」は、自尊心を傷付けないためにバージニアが誓う決め事である。「彼との関係において……鉄則1.愛情表現は公然と行わない。鉄則2.体重のことは口にしない。鉄則3.……」。
 自分を抑えながら、ときに体型を嘆きながら送るバージニアの新学期は、ボーイフレンドとはまだ言い切れないボーイフレンド、フロッギー、体型の細さと美貌を鼻にかけるブリー3人娘、心のよりどころとなるクロウリー先生ほか個性豊かな教師たちに囲まれスタートした。ところが完璧なはずだった生活は、1本の電話をきっかけに崩れ始める。コロンビア大学に通う兄のバイロンが秋期停学処分となる事件を起こしたのだ。衝撃は家族を揺さぶるが、突然降りかかった事件を通してバージニアは、自分らしさ、生き方、家族関係を見つめ直し始める……。
 完璧な姉、兄をうらやみながら、陰に隠れ痛いほど自分を抑えつけるバージニアがいじらしかった。こんな気持ちを子どもにさせている親って、一体どういう人たち? 社会的に地位も名誉も富みも手に入れ、(悲しいかな、バージニアを除き)完璧な子どもたちに満足する親。「まわりに誇りを感じさせる人間になりなさい」って、これはものすごいプレッシャーだ。とはいえ、彼女の両親のような社会的成功は誰もが一度は夢見ることではないか。一見パーフェクトだけどすべてをきれい事で済ませ真に心の通っていない家族を見ていると、幸せって何なのか……自分の価値観を確かめるいい機会になった。
 個人的に非常に興味深かったのは、バージニアが事件の傷心を癒しに訪ねた土地が、なんと!シアトルだったこと。これはこの街の空気にぴったり〜、ナイス・ピック! フレンドリーな街なのである。
 エンタテイメントとしても人生訓としても成立する青春小説は、おなかをかかえて笑えるし、同時に深みもある。何よりバージニアが隣りで喋っているかのような生き生きとした表現がたまらない。まるで彼女のクラスメイトになったかのような気分が味わえる。ニューヨーク在住アッパー・ミドル・クラスの生活が現実味をおびて描かれる点もプラス。6月にペーパーバックが出たばかりなので、手元に置いておこうと思った。ときどき読み返せば、自分も親としてのやりとりなど学べそう。10代女の子の必読書。2004年M・プリンツ賞オナーも納得の内容である。(asukab)

The Earth, My Butt, and Other Big Round Things (Teen's Top 10 (Awards))

The Earth, My Butt, and Other Big Round Things (Teen's Top 10 (Awards))