四季の絵本手帖『あかいはっぱ きいろいはっぱ』

あかいはっぱきいろいはっぱ (かがくのほん)

あかいはっぱきいろいはっぱ (かがくのほん)

 緑濃く茂っていた木々の葉が赤や黄色に変わり始める秋は、自然の魔法が実感できる季節です。目の覚めるような鮮やかな紅葉を手にして、子どもは秋の訪れを確かめるのでしょう。自然の作り出す色に素直に心を震わせ、色づいた葉っぱを宝物のようにポケットやかばんにしまい込んで満ち足りた想いに浸るのです。
 拾った葉っぱは、窓辺に飾るだけで秋の空間ができあがるから不思議です。主人公の女の子も、そんな秋の色づきに魅せられている1人でした。作品は彼女が植えた砂糖カエデの苗木の成長を美しい実写コラージュで表し、甘い香りに包まれる北米の秋を伝えます。演出として仕掛けられた葉型の切り抜きが秋の充実感をたっぷりと証明し、子どもはすっかり秋の林を連想しています。
 鮮明な色の視覚、葉っぱを踏みしめる音の聴覚、手で触れる触覚、香りを体で感じる嗅覚、木から取れるシロップを味わう味覚――五感すべてを満たしてくれる砂糖カエデの木は、まさに秋の主です。特に種は空中でくるくる回りながら着陸するおもちゃとしても遊べるので、心はわくわく戸外に向かいます。「わたしの カエデを みたい ひとは あきに きてください。だって あきは さいこうの きせつ。なぜだか わかるでしょう?」――秋を体全体で感じ取れば女の子の一言はすぐに理解できます。巻末に、カエデの種類、育て方の説明が付いています。(asukab)