クイル賞ノミネート絵本を読む#3 愉快なRunny Babbit語遊び

 『Runny Babbit: A Billy Sook』は、日本では『おおきな木』や『新装 ぼくを探しに』で知られる詩人、漫画家、脚本家、俳優、音楽家グラミー賞受賞作詞家……と多彩な才能で活躍したシルヴァスタインの最後の詩画集。楽しい言葉遊びは、まずタイトルに表れる。「Bunny Rabbit」の頭文字を入れ替えて「Runny Babbit」。副題は「A Silly Book」を「A Billy Sook」に。主人公Runny Babbitの友だちもみな、この具合で命名される。グースの「Goctor Doose」、かめの「Toe Jurtle」、お豆の「Bumping Jean」などなど。イラストの動物たちは愛敬いっぱいで、一目で魅せられる。娘は表紙を目にしただけで「おもしろい〜」と喜んでいた。ここに言葉遊びが加わるのだから、教室などで読めば子どものクスクス笑いがあちらこちらから聞こえてくるはず。
 あいさつは「Ki, Hids....(つまり、Hi, Kids....)」で、この遊びは作品全体を、愉快+不思議な意識で包み込む。絵本の中に住む動物たちの間では、こうやって入れ替え言葉で話すことが普通なのだ。名詞の頭を入れ替えるだけで「A mummy and a dad(お母ちゃんとお父ちゃん)」が「A dummy and a mad(ニセモノとごきげんななめ)」になったりとおかしな言葉が生まれるのに、ここに動詞が加わったらどうなるだろう。あっという間にへんてこりんな空間が飛び出てきた。これをRunny Babbit語と言うのだそう。たとえば「Let's bead a rook.」なんて。
 というわけで見開き2ページにわたり、入れ替え言葉で綴られる詩が42作品。うさぎの生活ぶりを追いながら、モノクロペン画のイラストといっしょにシルヴァスタイン独自の世界が展開される。う〜ん、さすが。これはファンにならずにいられない! 一家に一冊とは、このような作品に似合う表現である。
 クイル賞……、仕掛け絵本の『America the Beautiful (Classic Collectible Pop-Up)』と『Egyptology: Search for the Tomb of Osiris (Ologies)』はとりあえず別にして、『Knuffle Bunny*1といい勝負だと思った。甲乙付けがたい。(asukab)

Runny Babbit: A Billy Sook

Runny Babbit: A Billy Sook