四季の絵本手帖『アップルパイをつくりましょ』

• 秋の21ページ　アップルパイをつくりましょ―りょこうもいっしょにしちゃいましょ

アップルパイをつくりましょ―りょこうもいっしょにしちゃいましょ

　この絵本に登場するアップルパイは特別です。なぜなら、素材を世界中から集めて作るからです。材料はりんご、小麦粉、砂糖、シナモン、塩、バター、卵――普段はマーケットで買いますが、もしマーケットが閉まっていたらどうしましょう。そこで、女の子は大急ぎで荷造りをしてイタリアに向かいました。子どもは見返しの世界地図を確認しながら、女の子といっしょに食材集めの世界旅行に出発です。
　イタリアでは１番上等の麦、フランスではすてきな卵を産むめんどりを１羽、スリランカでは世界１香り高いシナモン、イギリスではお行儀のいい牛１頭、途中で海水をすくい、ジャマイカではさとうきび、１番大事なリンゴはバーモント州のリンゴ園から――船、汽車、飛行機、自転車とさまざまに乗り継いで、女の子は西から東へと奔走します。躍動感あふれるイラストが各地の様子を生き生きと描き、子どもの胸も興味で高鳴ります。視点を変えれば、パイを通して世界中の人たちとの関わりが学べ、食の源流発見のきっかけにもなるかもしれません。
　家に持ち帰った素材を加工する光景は、軽快なテンポで紹介されます。こうしてできあがったアップルパイは、それは格別の味わいでしょう。テーブルを囲む笑顔は途中出会った子どもたちで、幸せな気分はいっそう盛り上がります。もちろん、パイの作り方も紹介されているので、子どもといっしょに楽しまない手はありません。(asukab)