四季の絵本手帖『きんいろのとき』

きんいろのとき―ゆたかな秋のものがたり

きんいろのとき―ゆたかな秋のものがたり

 「きりぎりすが鳴き始めると霜が降りるまで、あと6週間」。古い言い伝えは、毎年みごとに秋の訪れを言い当てます。農場や森に彩色される落ち着いた濃い黄色を基調に、作品は北米の秋の深まりをゆっくりと物語ります。
 学校が始まり、収穫を終え、ハロウィーン、収穫感謝祭を迎える季節は、1年の中でももっとも満ち足りた気持ちが味わえるときです。木々の色づき、空気の匂い――気がつけば、体全体を包み込むように秋はたたずんでいます。この季節ほど音や匂いが、懐かしさや恋しさとともによみがえるときはないかもしれません。刈り取り機の音、木の実が落ちて森に響く音、リスが落ち葉を踏み鳴らす音、かぼちゃパイの香り、七面鳥をローストする芳ばしい匂い……視覚とともに飛び込む音や匂いに子どもはとても敏感です。イメージは五感を通して植え付けられていくのでしょう。秋の正体は、毎年のように記憶のフィルターを通してよみがえります。
 落ち葉や木の実拾いなど身の回りの秋探しは、子どもにとって極上の楽しみです。拾う間に、見るもの、触れるものはもちろんのこと、音や匂いもいっしょに残されていきます。親子でいっしょに過ごせば、黄金色の思い出のできあがり――。豊かな秋の物語は、絵本に描かれるように、すべてが満ちたりています。(asukab)