四季の絵本手帖『夕あかりの国』

夕あかりの国

夕あかりの国

 「だいじょうぶ」――何かつらいことや心配ごとがあるとき、子どもにとりこれほど救いになる言葉はないかもしれません。主人公のヨーランは足が悪く、一生歩けないことを知ったばかりでした。気持ちの沈むヨーランの前に現れたのは、リリョンクバストさんという小さなおじさんです。足のことを理由に外に出たがらないヨーランに、「そんなこと平気だよ。夕あかりの国では、なんでもないんだ」と話し、ヨーランを柔らかな夕あかりに包まれた空の散歩に誘いました。
 おじさんはほの紅い街の上を飛びながら、「こんなことしてみたいな、こんなことがあったらいいな」と子どもなら誰もが思うことを、どんどん教えてくれます。公園の木になっている赤や黄色のキャンディを食べたり、電車の運転をしてみたり、ヨーランは不思議で楽しいことをたくさん体験しました。こうしておじさんは毎日、夕方になるとやってきて、ヨーランを夕あかりの国に連れて行ってくれるのです。
 「だいじょうぶ、なんでもできるんだよ」というおじさんの言葉はヨーランだけでなく、読み手である子どもをも安らぎで包み込む力を持つ言葉です。小さな一言で子どものつらい世界が明るくなるとしたら、それが大人に課せられた役割といえるでしょう。「あそこにいるときは、すごくうれしいんだ」とヨーランが話す夕あかりの国は、子どもに限らず誰にとってもなくてはならない大切な国なのかもしれません。(asukab)