四季の絵本手帖『ゆきのひのうさこちゃん』

ゆきのひのうさこちゃん (ブルーナの絵本)

ゆきのひのうさこちゃん (ブルーナの絵本)

 表紙には、ちょっぴり首をかしげながら、まっすぐにこちらを見つめるうさこちゃんが立っています。表情に笑顔は見られませんが、その視線にはあどけなさ、純粋さがそのまま表れ、何かを訴えるのでしょう。はっきりした輪郭と原色使いの配色は、子どもにうさこちゃんのイメージを鮮やかに植え付けます。
 ページをめくると、左ページには丁寧でわかりやすい文章、右ページには四角い平面をあますところなく用いたシンプルなイラストが施され、うさこちゃんの冬の1日が「間」と「流れ」を巧みに利用して描かれます。「あなた」「ほら ごらんなさい」「いってまいります とうさん かあさん」といった丁寧な言葉づかいには、一昔前、ゆっくりと時間が流れていた時代の人々の気持ちを垣間見ることができ、自然と心を落ち着かせる力を持ち合わせます。言葉づかいと色使い――2つの特徴は、うさこちゃんは他の絵本のキャラクターたちとは一味違う特別な存在であることを十分に証明します。
 うさこちゃんが冬の遊びを満喫する姿は、それだけでわかりやすい抒情詩です。小鳥との出会いで見せる大粒の涙は子どもが気になる場面だけに、彼女のやさしい気持ちと活躍ぶりは結末を温かく飾ります。まっ青な空とまっ白な雪を背景に描かれるできごとは透明な明るさの中で淡々と語られ、うさこちゃんの澄んだ心を表しているかのようです。(asukab)