四季の絵本手帖『ゆきのひ』

ゆきのひ (偕成社の新訳えほん―キーツの絵本)

ゆきのひ (偕成社の新訳えほん―キーツの絵本)

 雪の積もった朝は部屋の中がほんのりと明るくなり、目覚めた瞬間、子どもは薄明かりの静けさに雪の到来を察知するものです。わくわく胸を躍らせながらもそっとカーテンを開くと、「やっぱり!」――期待は裏切られませんでした。目の前には一面の雪景色が広がります。絵本の主人公ピーターは、このときどんな気持ちだったのでしょう。
 朝食の後、暖かく着こんだピーターは銀世界に飛び出しました。1歩1歩足跡を残してみたり、鳥のように跳ねてみたり、棒といっしょに足を引きずりながら歩いてみたり、雪のキャンバスにはさまざまな模様が表れます。新雪の上で仰向けになり天使の形を描く場面は、子どもも遊びの衝動に駆られてしまうでしょう。雪に覆われた世界はいつも見なれた世界とはまったく異なるので、光る白さはピーターをひたすら自然との戯れに引き込んでいきました。雪に魅せられるピーターの姿は、切り絵、貼り絵の巧みな構図を通して美しく伝えられます。
 子どもの視点からの描写は、遊び終わった後にも続きます。ぬれた靴下をお母さんに脱がしてもらいながら外の様子を話し、お風呂に浸かりながら雪の場面も何回も何回も思い描いたピーターの気持ちは子どもにも十分共感できるものです。砂糖菓子ような雪の結晶は、ピーターの心にも、子どもの心にも、いつまでも夢のように舞い続けることでしょう。(asukab)