四季の絵本手帖『ヨセフのだいじなコート』

ヨセフのだいじなコート (ほんやくえほん)

ヨセフのだいじなコート (ほんやくえほん)

 ユダヤ民族に伝わる歌を仕掛け絵本にした愉快な作品です。物を大事にすることを歌ったお話は、穴の開いたコートが描かれた表紙からすでに始まっています。ヨセフは擦り切れたコートのすそにつぎを当てて大切に着ていましたが、古くなってきたのでジャケットに仕立て直しました。そのジャケットも着ているうちに古くなってきたので、今度はチョッキに直します。こうして着古すたび新しい物に作り変えていきますが、最後はいったいどうなるのでしょう。子どもは「変化」が好きですから、ページをめくるたびに仕掛けの切り抜きが新しく仕上がった服や小物を鮮やかに映し出すと、みごとな移り変わりにたちまち夢中になります。同時に物の尊さがユーモアを交えて描かれるので、無意識のうちに再利用という工夫についても学んでいることでしょう。
 着る物がテーマの絵本だけに、イラストにはいたるところに花柄、格子、しま模様といった布がコラージュとして使用され華やかさとカラフルさを提供します。もともとは歌なので、ページの節々からどことなくもの哀しげで快活な東欧ユダヤ民族の調べが流れてきそうな雰囲気は味わい深いところです。千代紙や新聞、写真の切り抜きなどもいっしょにレイアウトされ、文化の特色が濃く表れた人々のいでたちと合わせ、にぎやかにページを飾ります。このあたりは工夫次第で、いろいろな探し物遊びができます。気になるのは、最後にコートがどうなったかでしょう。(asukab)