猫好きさんに贈る詩の絵本『So, What's It Like to Be a Cat?』

 あなたは犬派か、それとも猫派か――。この問いかけは、永遠に近い。ペット好きな人たちの間では、何度でもやりとりされる。だから犬猫関係の絵本は、必然的に多くなる。さて、わたしはといえば、家にはいつも猫がいたことがあり子ども時代はずっと猫派だった。でも米国で愛犬スクーターと暮らし始め、今は犬派になっているような気もする。
 絵本『So, What's It Like to Be a Cat?』は、男の子が猫にインタビューしながら猫の実態を語る愉快な詩の絵本である。「猫になるって、どんな感じなの?」という男の子の質問にグレイの猫が答え始める。猫ちゃんの答えによると、猫ライフは人間の寝静まった真夜中に始まる。静かに起き出して、お食事をさがしに行くのだそう。「でも、廊下もお皿もは真っ暗だし、ぼくが猫だったら怖くてしかたないよ」と男の子が言うと、猫は暗がりでもよく見えるのさとの返答。おなかがいっぱいになると、ベッドに戻る。「自分の写真が上に飾られたかかったベッドがあるの?」などと質問は幼い視点からのつぶやきなので、猫ちゃんの表情にはちょっぴり苛立ちも見える。犬は朝、親しみを込めて人間にあいさつをするけれど、猫はひとりでいたいからほうっておいて欲しいんだと本音もたくさん告白される。
 たわいもないやりとりが燦然と輝く原因は、何と言っても作者の言葉の選択と詩のリズムのよさにある。上手な詩、つまり心に染みる詩とは、シンプルな言葉で充分であることがここに鮮やかに証明された。短歌でもそう。平明な言葉で写実し感動を起こす歌は、柔らかくて悠然とした心理状態でないとなかなか生まれてこない。難しいことを詰め込むよりも、人の心に響く言葉で表現すること――。そんな詩歌の基本が確認できた。
 猫派のみなさんに贈る絵本だったけれど、わたしにとっては詩の巧さに魅せられた1冊だった。個人的に猫ちゃんは、太っちょが好きだなあ。(asukab)

So, What's It Like to Be a Cat?

So, What's It Like to Be a Cat?