アンデルセン作『The Pea Bloosom』の中国仕立て

 『Pea Blossom』は、アンデルセン原作『さやからとび出た五つのえんどう豆』を、中国北京を舞台に語った絵本。今年の夏は「豆付いて」いたし、表紙の5つの豆の顔を見ただけで必読絵本にしてしまった。 
 畑で育った5粒のえんどう豆はそれぞれ、自分たちの願いを語り合う。1番目の豆は「さやから飛び出して太陽のところまで飛んでいく」、2番目は「わたしは月まで」、3番目と4番目は「豆ご飯の中に入り皇帝の食事になる」……。最後に残った1番小さな豆は「ものごとは、なるようになる」と思っていた。物語は最後の豆の行く末を描く形で展開される。
 とにかく、和紙に描かれた心洗われる水彩が1番の魅力である。色の染み具合、広がり具合、筆さばきと和紙の空間に、えも言われぬ静謐さが漂い、中国や日本など極東アジア文化の美に触れることができる。人体描写はデッサン力不足を感じさせるが、ここは技術よりそこに流れる静寂の方に価値があるのだろう。作者は北京で4年間、巻物美術の勉強を積んだということで、描かれる街並みは中国文化そのものの佇まいだ。植物、緑の再生力が伝わる、やさしい1冊だった。
 現在、うちの庭ではトマトが真っ盛り。真っ赤に熟れたトマトはそれは甘くて、果物に分類される理由もよくわかる。毎日もいでは、つるつるで皮の厚いパチンとした歯ごたえのトマトをかじっている。(asukab)

Pea Blossom

Pea Blossom