アンデルセン作「えんどう豆の上のお姫さま」の現代版『The Very Smart Pea and the Princess-to-be』

 『Biscuit Bear*1以来、完璧にミニ・グレイに魅せられたわが家では『Traction Man Is Here! (Boston Globe-Horn Book Awards (Awards))*2のリクエストが毎晩のように続いている。これはもう作品すべてを手に入れるしかないと、彼女の米国デビュー作『The Very Smart Pea and the Princess-to-be』をアマゾンに注文した。(残るは『Egg Drop』のみ。)
 原作の『The Princess and the Pea』(『えんどう豆の上のお姫さま』)は、真のお姫さまを探す王子母子のお話。姫探しが難航する中、女王はある雨の夜にやってきたお姫さまをマットレス12枚を敷いたベッドで一晩休ませる。実はこのマットレスの1番下には小さなえんどう豆が置いてあり、真の姫ならば、その豆粒のせいで熟睡できないだろうというのが彼らの判断だった。さて、このお姫さまは、次の朝、どんな反応をしたのだろう……。
 これがアンデルセンの原作だが、これを豆の視点から描き現代版にアレンジするとまたモダンなおとぎ話になる。『The Very Smart Pea and the Princess-to-be』に描かれるロイヤルファミリーはあきらかに現代人。王子は真の姫を探しに世界中を旅したけれど、ぴたりとくる娘は見つからない。ある雨の夜、訪ねてきたのは、お城の畑を世話している園芸係の女の子だった。ここで小さな豆は、自分を育ててくれたお礼を込めて一肌脱ごうとある行動を起こす。
 全体を貫くテーマは、緑・畑のすばらしさといった自然賛歌。それは、王子らの背後にのぞく畑仕事に精を出す女の子のひたむきな姿にも表れる。グレイの作品に共通するイラスト細部への心配りは、ここでも十分に威力を発揮する。
 ひとつぶの豆から見たアンデルセンのお話は、畑の生命力をたたえながら機知に富んだ夢物語を生み出した。あらためてミニ・グレイの感性と発想、創造力に感服である。どれもこれも、はずれのない絵本ばかり。見返しに始まり、見返しに終わるこの絵本も、ほっこり心が温まり、何だか元気が湧いてくるタイプの絵本。庭仕事の好きな人へのプレゼントにうってつけだと思った。(asukab)

The Very Smart Pea and the Princess-to-be

The Very Smart Pea and the Princess-to-be