四季の絵本手帖『くんちゃんとふゆのパーティー』

 森の家でささやかに生活を営むくま一家の、冬ごもり前の風景を温かく描いたお話です。くまの子くんちゃんは、雪を見たことがありません。雪見たさ一心で冬ごもりを伸ばしてもらうと、さっそく初雪が降り大喜びしました。ところが、嬉しいはずの雪は森の動物たちにとっては、食べものが見つけにくくなる原因でした。そこで、くんちゃんは動物たちのためにすてきなことを思いつきました。
 くんちゃんの動物たちや家族への思いやりが温かく愛しく描かれ、子どもにしてみれば居心地のいい陽だまりにいるような気持ちになる作品でしょう。小鳥やりす、うさぎたちのためにごちそうを集めるくんちゃん、出かけているお父さんをびっくりさせようとお母さんに手伝ってもらいながら型抜きクッキーやベリーの飾り物を作るくんちゃん……、どのくんちゃんの姿も相手を純粋に思う心の表れで、大人になっても、どこで生活をしようとも、忘れたくない大切な姿を示しています。親子の会話ややりとりひとつひとつに思いやりが存在すると、こんなにも温かな安らぎに包まれるという事実――くんちゃんたちの生活は、みごとに温もりの理由を証明します。
 ペン画に赤一色が灯るように彩色されるイラストは、シンプルさゆえに大切なメッセージを素直に伝えてくれます。クリスマスとはうたっていませんが、その季節にふさわしい心がやさしく作品全体を覆っています。(asukab)