四季の絵本手帖『くまのコールテンくん』

くまのコールテンくん (フリーマンの絵本)

くまのコールテンくん (フリーマンの絵本)

 コールテンくんは、くまのぬいぐるみです。デパートのおもちゃ売り場で、誰かが来てうちに連れて行ってくれないかなと買い主を待ちわびていました。すると、お母さんといっしょに買い物にきていた女の子が近づいてきました。「こんな くまが ほしかったの」と嬉しそうな笑顔の彼女は、お母さんにおねだります。でも、お母さんは首を横に振り、コールテンくんのボタンがとれていることも理由にしました。つりズボンのボタンがないことを知ったコールテンくんは、その晩、ボタンを探そうとデパートの中を巡り歩きます。
 コールテンくんの健気で純粋なつぶやき、女の子の残念そうな表情――。にぎやかなデパートでのできごとは、子どもにとっても身に覚えのある体験かもしれません。おもちゃの気持ちというささやかな発見は、彼らとの新しい関係を築くものでもあるでしょう。たくさんのおもちゃの並んだ売り場の光景を見て、子どもの心はすっかり女の子に同化していきます。
 初めてデパートの中を探検するコールテンくんの視点は、読者を愛しさで包み込みます。素直に思いを打ち明けるコールテンくんが、自分の家にも来てくれたらとも願うでしょう。清らかな心と友だちのすばらしさが描かれるかわいらしいお話は、子どもの心に喜び、温もりとともに染み込んでいきます。読後は思わずぬいぐるみにほおずりしたくなる衝動に駆られます。(asukab)