おしゃれな猫とのってる犬『Cool Cat, Hot Dog』

 『Silent Night』(邦訳『サイレントナイト』)に魅せられて以来、サンディー・ターナーの名前はずっと気になっていた。だから今夏、書店で手にした『Cool Cat, Hot Dog』も、一目でお気に入りになった。
 猫と犬の生態がターナーの手にかかると、スタイリッシュなアートとして生まれ変わる。左ページには猫、右ページには犬――。彼らの「性格、行動、習性」と即かず離れずの関係は、厚紙や包装紙、留め金、封筒、切手、毛などを用いたコラージュとそこに見え隠れする下書き風の鉛筆描きを伴って表現される。
 これは何とも渋い都会風の犬猫コンビの誕生だ。無機質でおかしさの備わった空間は、構図と素材感のなせる業だろう。タイプライターで打たれた簡潔な文章は、ともに人間に愛されるペットでありながら対照的な生活を送る2匹の姿をユーモラスに語り出す。基調色は、厚紙や茶封筒の薄茶。素材からしてそれとなく事務的な雰囲気が漂うのだが、これが生きた動物の描写となると、かえって作者の人間味が浮かび上がる効果となるのでおもしろい。
 某ブランドの白い包装用ティッシュペーパーが枕カバーになっているのを見て、包装紙を大事にとっておいた子ども時代を思い出す。「この形をこんな風に使ったら?」なんて、切り紙をするとき、母がよく教えてくれた。今は当時よりも何十倍も美しい包装紙が、あっさりとリサイクル箱に直行している。悲しいかな、アートする気持ちの余裕のなさか。
 こっそり暇を見つけては開きたくなってしまう類の絵本。やはり、アート表現がユニークで楽しいのだ。娘が鉛筆やボタン、チケットの貼られたコラージュの細部をじっくりと見入っていたので、読み進めようともなかなか次のページをめくれなかった。何度も前のページに戻ろうとしたり。でも、これはそうやってアートを堪能する絵本である。(asukab)

Cool Cat, Hot Dog

Cool Cat, Hot Dog