四季の絵本手帖『ちいさなろば』

ちいさな ろば (こどものとも傑作集)

ちいさな ろば (こどものとも傑作集)

 与えることの尊さがろばの気持ちと行いを通して描かれる、気品あふれるクリスマスの絵本です。小さなろばは、牧場の囲いの中でひとりぼっちでした。だからでしょうか、雪の降るある日、2人の女の子から教えてもらったサンタクロースのおじいさんの話は、ろばの心をときめかせました。おじいさんはクリスマス・イブの夜、子どもたちにプレゼントを配って回るというのです。自分もプレゼントがもらえたら、どんなにすてきだろう――。誰もが描くクリスマスの夢を抱きながら、ろばはやさしいおじいさんの大きな心に引かれていきました。
 その晩、鈴の音で目をさましたろばは怪我をした1匹のトナカイのかわりに銀色のそりを引いてもらえないか、憧れのサンタクロースから頼まれました。「おてつだいしますとも!」――ろばは目を輝かせて答え、凍てついた冬の空にいっしょに駆け出しました。大好きなおじいさんのお手伝いをしながら冬の夜空を走ったろばは、どんな気持ちだったでしょう。子どもはろばといっしょになり、透き通った夜空を駆け巡ります。
 捧げることを喜びとしたろばの清らかな心は、おじいさんにも、読み手である子どもにも十分に伝わります。「おまえには、なにか いいプレゼントを やらなくてはならないな」――そう言われたろばは、自分の願いを素直に伝えました。クリスマスの朝、小さなろばが受け取ったプレゼントはいったい何だったのでしょう。
 透明感あふれる水彩・パステル画がろばの純粋な思いを描き、クリスマスの真の意味を伝えます。美しい心を宿したろばは気高い深紅に包まれながら、クリスマスの象徴として絵本の表紙を飾ります。(asukab)