授業日初日の絵本は『Lilly's Purple Plastic Purse』

 「家では毎日必ず、その日の学校生活について3つ質問してください。」と先生からのお知らせにあったのでさっそく娘を質問攻めにする。「今日は何したの?」「何の絵を描いたの?」「何の本読んだの?」。でも、娘は「忘れた」の一言。おっとっと、そうだった。WHクエスチョンよりもTell me---のアプローチでいかなければ。それでも答えはいっしょ。親が聞くと答えず、どうでもいいような、とんでもないときに話し出す。まあ、そんなものか。それでも何とか「色」に関する学習をしたことだけはつきとめた。
 で、バックパックをのぞくと、色の名前を書き込むワークシートが1枚。よく見ると、おお、これは『Lilly's Purple Plastic Purse』(邦訳『おしゃまなリリーとおしゃれなバッグ』)のスリンガー先生のネクタイではないか。スリンガー先生は頭がよくて、おしゃれで、毎日違うネクタイを締めてくる先生である。この日はスリンガー先生のネクタイに色を塗りながら、色のつづりを学んだようだ。
 スリンガー先生は、絵本の主人公リリーの担任の先生。リリーは学校が大好き。なぜなら、スリンガー先生のことが大好きだから。「おおきくなったら、先生になりたいの」とリリーが言うと、友だちも「ぼくもだよ」と口々に反応がある。うむむ、これほど教師冥利に尽きる言葉はない。クラス運営が順風満帆に進められている1番の証拠である。主人のクラスは、どうなのだろうとふと現実に戻り気になってしまったが。……そんなある日、リリーはおばあちゃんから紫色の洒落たバッグを買ってもらう。開けると音楽が流れるすてきなバッグとあり、リリーはみんなに自慢したくてしかたがない。月曜日の朝、スリンガー先生みたいな鎖のついたかっこいいめがねをかけ、ぴっかぴかのコインを3枚もらい、紫色のバッグを持ち、はなうた交じりで登校するリリー。この日は胸が高鳴り学習に集中できなくて、彼女はスリンガー先生から注意される。
 あれだけ慕っていたスリンガー先生と気まずい関係に陥るリリーだが、わたしはここを教師の立場から見て楽しませてもらう。ものごとをうまく運べる人間は、窮地でも波風立てずに対処できる。結局人間性が語るところなのだけど、まわりの状況によりつぶれてしまうこともあるのだよ。そう考えると、しっかりと生徒の心をつかむスリンガー先生は真のプロなのである。
 教師の存在は子どもに大きく影響する。ときにその責任を思うと押しつぶされそうにもなるけれど、子どもと触れ合う仕事ほど幸せの実感できる仕事はないだろう。
 新学期が始まった。教室の風景、子どもたちの様子が明るく描かれるこの作品は、授業日初日にふさわしい絵本だったと新しい担任の先生に感謝する。(asukab)

おしゃまなリリーとおしゃれなバッグ

おしゃまなリリーとおしゃれなバッグ